家族葬専門葬儀社オフィスシオン しきたりアカデミー

葬儀や死の専門情報を通じて、そこに向かいより良い人生を歩めるように、少しでもお役に立てれば幸いです。

1月29日 母が残した俳句

「オフィスシオンFMしきたりアカデミー」では、家族葬専門葬儀社オフィスシオンが、しきたりや、葬にまつわる慣習やマナーをご紹介いたします。

今回のシリーズは、「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」です。今は亡きあの人へ伝えたい言葉プロジェクトは人と人の温かいつながりや、人の優しい心を多くの人に伝えていこうとの思いからスタートしました。全国から寄せられたたくさんのお手紙の中から、毎日1話ずつご紹介していきます。

母が残した俳句

あなたが亡くなった後に部屋を片付けていて、驚きました。明らかに入院中に詠んだと思われる俳句のメモが出てきたのです。随分多くの句が記されているのですが、もう文字も忘れてしまった頭で、それでも必死になって書き綴ったと思われるものです。一行をまっすぐに書くこともできなくなり、乱れた文字で書き残したそれらを見て胸の詰まる思いがしました。

院内やつくづく醒めて春の雪
花咲いて老婆泣きおりこの世かな
狂えるは1人旅ゆく花嵐

一日中探し物し、お金を取られたといっては弟夫婦を困らせ、生まれ育った長崎に帰りたいと言い出したら、もう決して誰の言うこと聞こうとしなかったあなた。私たちは、あなたのことは完全に壊れた人だと思いました。も自分たちだけでは面倒見ることができないとあなたを施設に預けたのです。
そのあなたが、これだけ見事な句を作り続けていたなどと、どうしても信じることができません。見舞いに行くと『家に帰りたい。ここが何処かわからない』と言っては、私を悲しませたものです。弟夫婦はよく辛抱して、あなたの世話をしてくれたし、私は、姑のいる我が家にあなたを引き取ることなどできなかった。『もしあの時』という選択肢は、今も思いつかないままです。
でも、懇願しても聞き入れてもらえない悲しみを抱えて、深い孤独の中で、これらの句を詠んだあなた。それを、亡くなった後になって知るとは、改めて私は自分の冷たさに向き合わざるを得ません。

迷い出ていて一匹の蟻うろたえぬ
春眠や醒めて1人となり到る

認知症になり、この頭の霧が晴れたらいいのにといつも泣いて嘆いていたあなたを、最後に支えたのは、やはり私たちではなく、俳句だったのでしょうか。

もしあの世というものがあり、そこであなたに会えるならばその時こそあなたの俳句について思いっきり話しあいたい。今も私を責め続けている一句一句について、議論したり感想を述べ合ったりしたい。どうして私たちは、もっとあなたの俳句について話し合わなかったのでしょう。死の間際のあなたを支えたのは結局俳句であり、私達子供ではなかったことについても、聞いてみたいと思っています。

家族葬専門葬儀社オフィスシオンがお送りいたしました。

火, 1月 29 2013 » 「今は亡きあの人に伝えたい言葉」より

コメントをどうぞ