家族葬専門葬儀社オフィスシオン しきたりアカデミー

葬儀や死の専門情報を通じて、そこに向かいより良い人生を歩めるように、少しでもお役に立てれば幸いです。

2月5日 間に合わなかったけれど

「オフィスシオンFMしきたりアカデミー」では、家族葬専門葬儀社オフィスシオンが、しきたりや、葬にまつわる慣習やマナーをご紹介いたします。
今回のシリーズは、「今は亡きあの人へ伝えたい言葉」です。
今は亡きあの人へ伝えたい言葉プロジェクトは人と人の温かいつながりや、人の優しい心を多くの人に伝えていこうとの思いからスタートしました。全国から寄せられたたくさんのお手紙の中から、毎日1話ずつご紹介していきます。

間に合わなかったけれど

『おふくろ30分前に逝ったよ』
妊娠中の娘の手伝いで10日を過ごし、疲れ果てて帰り着いたあの日、人気のない駅に降り立った私を待っていたのは虚ろに響く夫の声でした。
空っぽの心で駆け付けた病院の霊安室。暗く冷たい部屋のベッドの上に、幼児のようにあどけなく穏やかに眠る、お義母さんの姿がありました。もう、あなたの浮き世離れした話を聞くことも、裏返しにきた服を直してやることもできない。理想的な娘のような嫁になれなかったお詫びや、喧嘩しつつも30数年共に暮らせた喜び。万感の思いを込めて告げるつもりだった私の『ありがとう』は間に合わなかった。ぽろぽろと涙がこぼれました。

私達が同居したての頃、お義母さんは今の私よりもっと若く、一家の頼もしい中心でした。耳にタコが出来るほど聞かされた、若き日の苦労話や愚痴話。毛糸編みの内職をして我が家を建てたこと、庭一面にバラ園を作ったこと、子育てには毅然として当たり、周囲から頼りにされていたこと。いつも冷静で何でも出来る人。憧れさえ抱いたものです。共に、世の中の理不尽さを憂え、蓮華や彼岸花摘みをしたり、時には争いもしました。

そんな気丈なあなたに、いつの頃からか現れ始めた異変。思えば、旅立ちの序章だったのでしょうね。そこにいない人に話しかけたり、服を逆さまに着たり、真夜中に冷蔵庫ほ食材をテーブルに並べたり、たくさんの布団を広げて、お客を迎える準備をしたり。ついには真夜中の徘徊。お義母さんの世界がどんどん私たちの手から遠のいていきました。
認めたくも信じたくもありませんでした。でもどんどん幼児に還っていくあなたはいじらしく、愛おしく感じられるようになりました。春になったら、大好きな桜の花見連れて行こう。いろいろ想いを膨らませました。それなのにあっという間に終章が訪れて。

四十九日が過ぎた朝、玄関前のミニトマトの葉の上に一匹のホタルが訪れました。逝ったばかりのお義母さんが、旅立ちに間に合わなかった私のために、お別れに来てくれた・・・家の中にそっと放すと嬉しそうに光りました。『ありがとう』とようやく言えました。

お義母さん、待っていてくださいね。また会いに行きます。お葬式の日に号泣していたあなたの息子と一緒に。あなたのお気に入りのお墓の周囲は、新緑におおわれる頃です。

家族葬専門葬儀社オフィスシオンがお送りいたしました。

火, 2月 5 2013 » 「今は亡きあの人に伝えたい言葉」より

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